東京中日スポーツの記事

東京中日スポーツの記事を読んだ複数の友達から、「感動した」という電話をもらった。とってもつらくて泣きながら書いた原稿だったけど、そういってもらえるとホッとする。東京以外に住んでる人から、「読みたい」というメールもいただいた。そこで、ここにその全文を転載することにした。今回、多くの取材依頼があったのだけれど、「自分で原稿を書くか、取材を受けるのなら原稿チェックをさせてほしい」といったら、ほとんどのマスコミは「だったら結構です」といってきた。その中で自由に書かせてくれて、それをきちんと載せてくれた東京中日スポーツの方には感謝します。

「絶対に来てほしくない日が来てしまった。5月7日。hideの葬儀告別式が行なわれる日。築地本願寺には、千人を越える彼の友人や関係者が駆け付けた。その半数以上が、髪を赤や金に染めたミュージシャン仲間であった。

hideちゃん

こんなにたくさんのミュージシャンが一堂に会したのは、前例のないことだろう。こう数字を見ただけでも、いかに彼が信望の厚い人だったかがよくわかる。彼は、LUNA SEAをはじめとする多くのバンドにデビューのチャンスを与えると共に、実にたくさんのバンドから兄貴と慕われていた。面倒見がよくて、本当に友達想いだったhide。わたしは数多くのミュージシャンと知り合いだけれど、彼のことを悪くいう人に会ったことがない。別に亡くなってしまったから、きれいごとをいってるわけではない。本当に、誰からも愛されて慕われている人だったのだ。また、彼はX JAPANにおいても、実はバンドのまとめ役的な役割を果たしていた。弔辞でYOSHIKIも「hideがいなかったら、今の俺はありえない」と、涙ながらにいいきっていた。彼は常に他のバンドのメンバーに気を配り、自らバンドのとしての役目を買って出ていたのだ。

そんなhideの突然の死には、誰もが大きなショックを受けている。やりたいことがたくさんあって、その夢の実現に向けていきいきと抱負を語っていた彼に、いったい何が起こったのだろう。しかし、わたしの周りのhideの友人たちは口を揃えて、「あれは事故。いつものようにお酒を飲んで、悪ふざけをしていただけなんだ。真剣に死ぬつもりはなかったはず」といっている。わたしもそう思う。もちろん、本当のことはもう永遠にわからない。でも、hideを知らない人たちが何年も前のアルバムの一節を取り出して、自殺の原因を推察していることに心を砕くくらいなら、身近な人の声を聞いて欲しい。なにごとにも真剣に取り組む真面目で繊細な人だったから、悩みも苦しみもたくさんあっただろう。でも、彼はそれをこんな中途半端な形で、放棄してしまうような人ではなかった。

いろんな面で、これからがガンバリ時の今は、特に!

出棺の時、空を見上げたら、雲ひとつない真っ青な色をしていた。hideはこれからあの空の彼方にいってしまうんだと思ったら、また涙があふれてきた。あなたに、たくさんありがとうをいいたい。カッコイイ音楽を、楽しい時間を、ステキな思い出を、本当に本当にありがとう。でも、サヨナラだけはいいたくないよ。だから、バイバイ、hideちゃん、またね!」(5月8日 朝刊掲載 原文のまま)

みなさん、たくさんのメールをありがとう。hideちゃんが亡くなってから、早いものでもう二週間がたちます。最初の一週間はお葬式だなんだと忙しく、あっという間にすぎてしまいました。次の一週間は、レコーディングの仕事で毎日のようにスタジオに缶詰になっていました。彼がいなくなっても、いつもと同じように毎日朝はやってくるし、世間は何事もなかったかのように動いていくんですね。当たり前のことだけど……それに気がついた時、なんだかとても寂しくなりました。でも、わたしだってなんだかんだいいながらもちゃんと食事は食べているし、夜になればちゃんと寝ているし(さすがに最初の一週間は、ほとんど眠れなかったけれど)……。だけど、ふとした時に、やっぱり思い出しちゃうんだよね。スタジオでレコーディング作業をすれば、以前にhideちゃんとも同じような感じで仕事をしたなとか、遅くまでやってる店はたいてい一緒に行ったことがあるから、「ああ、ここにもみんなで来たことあったな」とか……。思い出すたびに胸が苦しくなるのだけれど、それはまだ仕方ないって自分で自分にいいきかせてる。

音楽雑誌の追悼原稿とか、テレビの追悼番組の出演や制作の手伝いなど、相変わらずいろんな依頼が来ている。でも、時間がたってからのものはいわゆる芸能マスコミではないし、きちんとhideちゃんのことを悼もうという姿勢のものが多いので、主旨に同意できるものはできるかぎり引き受けようと思ってる。どんなにhideちゃんがステキな人間だったかを、いっぱいみんなにも知ってもらいたいからだ。それが、天国のhideちゃんのためにわたしができる、唯一のことなんだもんね……。

MEMORIESトップページへ