Kraの取材に行くために、車を駐車場に停めようと一方通行の細い道を走っていた時のこと。左側を杖をついたおじいさんが歩いていたので注意して最徐行で走り、追い越したところで右折しようと一時停止をしたのね。そしたら、おじいさんが杖を振り回して、何か怒鳴っているの。ビックリしてドアを開けて「どうかなさいましたか?」と尋ねたら、「俺の前で車を止めて、危ないじゃないか!」という。
すごい剣幕で怒鳴り散らし、杖を振り回すもんだから、マジに怖くなってしまった。しかも、わたしの車は左ハンドルなのでおじいさんはわたしの腕を掴み、「外に出て謝れ!」とわめくの。身の危険を感じたので、「警察に電話します」といったのだけど、ガタガタ震えてしまって携帯のボタンをうまく押せない。よくテレビのサスペンス・ドラマで、死体を見つけた人が警察に電話をしようとする時、ガタガタ震えるというシーンがあるけど、あれってあながちオーバーな描写じゃないんだと思った。
警察に電話がつながったら、おじいさんは悪態をつきながらどこかに行ってしまったが、心臓が死ぬほどバクバクいってて話はうまくできないし、うしろの車は無常にもクラクションを鳴らし続けるし、しばらくは大変だった。
わたしは最大限の注意を払って運転していたつもりだったけど、万が一にもおじいさんに怖い想いをさせてしまったのかもしれない。それは申し訳ないと思うけれど、あんな状態では謝ることもできない。杖って、振り回すとかなり危険な凶器になるんだなと思ったよ。
事務所に行ってまずKraのメンバーに事の顛末を話したら、舞くんが「これ食べて、落ち着いてください」とチョコレートをくれた。スタッフさんの出してくれた暖かい紅茶とチョコレートで元気を回復し、ニュー・アルバムのインタビューは無事に終了。帰り際に再び舞くんが、「おじいさんに気をつけて、帰ってください!」と声をかけてくれた。もちろん、帰りはなにごともなかったけど、本当に怖い体験だった……。