Viju☆Love☆Night#006が中止になってしまったので、母が滞在している真鶴に行くことにする。いきなり思い立って、タヌサリを連れて出かけてしまったのだが、この時はまさか東京に帰ることができなくなってしまうとは思っていなかった。
まずガソリンがまったく買えないので、車で東京に帰ることができない。さらに、東海道線が小田原までしか通っていないので、バスを乗り継いて小田原まで行き、そこから電車で東京に向かうしかないのだが、小田急線はほぼ運休、東海道線も本数が極端に少ないという。取材もライヴもイベントもみんな飛んでしまったので、腹をくくってしばらく真鶴に滞在することにする。
それで、東京ではまだ体験できないであろう計画停電を、数回体験した。3時間くらいの停電、ちゃんと用意をしておけば何とかなるでしょうなんてたかをくくっていたのだけれど、実際は想像以上に大変だった。エレベーターもオートロックも使えず、トイレもダメ。テレビが見られないから本を読んで過ごそうと思っても、夕方になると暗くなって読めず、暖房をつけられないので部屋がどんどん寒くなってきて、家の中でもコート着用。結局、寝るのが一番と思って、変な時間にお昼寝するしかなかった。信号は消え、お店は閉店。街中は、ゴーストタウンみたいだった。今まで自分がいかに電気に頼った生活をしていたのか、ホントに身にしみてわかったよ。
地震発生からテレビとTwitterを見続けていたけれど、あまりにも辛い情報が多すぎて、どうしたらいいのかわからなかった。何かをしたいと思うのだけれど、何をしたらいいのかわからない。何ができるのかもわからない。Twitterでみんなに知らせたいと思う意見や情報をできるだけリツイートして広めたり、あちこちで募金をしたりすることしかできなくて、こんなことでいいのかととてつもない無力感を感じていた。
でも、テレビに映る被災地の方々の笑顔は、本当に美しかった。家を流されたり家族や知り合いが行方不明という過酷な状況の中でも、「助かったことが幸せ」「生きていることに感謝している」といって、一つのおにぎりを分け合って食べているのだ!ああ、人間って素晴らしい。日本人って素晴らしい。悲しい映像を見るたびに幾度となく涙があふれたけれど、この方たちの姿を見たとき、いちばんたくさん泣いてしまった。
その映像に感動していると、次に買占めしまくる東京の人々のニュースが映し出された。朝一番にスーパーに行き、キャベツを7個買ってるオバサン(トンカツ屋でも始めるのかな)。非常用懐中電灯のためといって、単一電池を3ダースも買ってるオジサン(どう考えても、10年分以上あるよ。電池漏れして、使えなくなると思うんですけど)。カートにトイレットペーパーと飲料水のペットボトルを積み上げて、「みんながぁ、買ってるからぁ、私も買っておこうと思ってぇぇ」と恥ずかしげもなくいう若い女性(この非常時にそのしゃべり方、やめんかい)。申し訳ないけど、醜悪としか思えない映像だった。私は東京に生まれて東京で育った生粋の東京っ子だけど、この時は本当に東京人であることが恥ずかしかった。もちろん、そんな人ばかりじゃないのはわかっているけど……。
そのテレビを見て、絶対に必要以上のものを買うのはやめようと思った。わたしのようにボヨヨンとした性格の人は、どーせたくさん買いだめしたってちゃんと使いきれなくて、結局は宝の持ち腐れになっちゃうような気がするしね(笑)。
それから、節電! 気をつけてみると、今までずいぶん無駄な電気を使っていたと思う。とりあえず、こまめに部屋の電気を消し、出かけるときは冷蔵庫以外、コンセントを抜くことにしよう。万が一の場合も、そのほうが安全だからね。
募金も、いっぱいしよう。今はネットで簡単に振り込めるし、どこのお店でもレジの前に募金箱が置いてあるから、おつりは極力募金箱に入れることにしよう。この間、渋谷で5組募金箱を持ってる方たちがいたので、端から順番に入れていったら、最後の方の時に小銭がなくなって、10円玉数枚になってしまった。「すいません、次はこっちから入れていきますから」といったら、「とんでもない。全部に入れてくれて、すごく嬉しいです。本当にありがとうございます!」といって、最敬礼してくれた。その女性の笑顔を見て、とってもあたたかい気持ちになれた。東京人、やるじゃーん(涙)。
もう一つ大切なこと。今まであまり政治のこととか、原発のこと、電力のことを考えてこなかったけど、これからは真剣に考えなくてはいけないと思う。Twitterに張りついていたおかげで今まで知らなかったいろいろな情報がわかったし、正直、このままではいけないと強く感じた。やみくもに「原発反対」というのではなく、理論的に代替策を考え、経済に打撃を与えないような方法を考えたうえで、ちゃんと声に出して自分に意見をいっていきたいと思う。
そして、音楽の力を信じて、今まで通り、いろんな情報をみなさんに伝えたり、楽しい時間を作ったりしていきたいと思う。自粛ムードの氾濫で、このまま日本の音楽業界は沈没してしまうんじゃないかと心配になるような状況だけど、自粛からは何も生まれないことを、たくさんの人が気付き始めている。楽しいことを楽しいといえないような世の中では、復興なんて難しい。こんな時だからこそ、明日に向かう勇気を、周りの人を気遣う気持ちを、一緒に歩んでいく元気を、きっと音楽が運んできてくれると信じて……。このロックンロール日記も今まで通り、みんなをくすっと笑わせてしまう話題をたくさん書いていきたいと思う。