時刻は午前4時。直前まで一緒に飲んでいたPATAとKYOちゃんは、いつの間にか帰ってしまい、まだ暗い路上にとり残されたのは、HIDE、クマちゃん、まゆまゆ、私の4人。「次、行くっしょ」という隊長〜それが誰かは想像におまかせします〜の号令で、もう思考回路がほとんど働かなくなっている4人は、何も考えずにタクシーに乗り込んだ。行く先は、当時、行きつけになっていた24時間営業の居酒屋。よろよろと店に入った4人は、なぜかビールと日本酒と納豆とみそ汁をオーダーした。その店には、壁に短冊のようにいろんなメニューが垂れ下がっていたのだが、何気なく壁を見ていた私は、その中に「ゆばまんがしら」としか読めない変な文字を見つけてしまったのだ。 | |
大島 | 「ねえ、あの”ゆばまんがしら”って、なんだと思う?」 |
まゆまゆ | 「魚の種類じゃないの?」 |
HIDE | 「きっと、尾頭つきの魚のことだよ」 |
まゆまゆ | 「尾頭つきの魚に、湯葉で味付けしてあるんじゃないかな。」 |
大島 | 「”ゆば”と”頭”はそれで説明がつくとして、真ん中の”まん”は何のことなの?」 |
HIDE | 「わかった!真ん丸の魚の尾頭だから”まんがしら”なんだよー」 |
まゆまゆ | 「真ん丸のお魚って、なーに?」 |
HIDE | 「だからあ、お盆みたいな形をした魚なんだよ」 |
と、ケンケンガクガク。 | |
多分、20分くらいはこの話題で盛り上がっていたんじゃないかな。こうして文章にしてみると、私たちがただ脳天気な大馬鹿者のように見えますが、お酒を飲んでいる時って、ほんのちょっとしたことですごくおかしかったりするんだよね。だから、ひとつの話題で延々と盛り上がっちゃったりするのだ(お酒飲む人は、この感じ、わかるよね、ねっ)。 それで、しばし「ゆばまんがしら」で討論が続いた後、とうとうHIDEが店員さんに、「すいません、あそこに書いてある”ゆばまんがしら”って何ですか?」と、尋ねたのだ、そしたらその店員さん、不思謝そうに首を傾げて壁のメニューを見た後ブッと吹き出して、「ああ、ゆばまんじゅうね。あれは、湯葉使って作ったお饅頭よ。おいしいですよ」だって。その瞬間、私たちは下を向いてシ〜ン。そして大爆笑。最初に字を読み間違えた私は、HIDEに、「”ゆばまんじゅう”って読むんじゃないかよ。おめ−は、それでもライターか!」と言われて、頭をバン、バン、たたかれてしまった。でもぉ。それまでみんなずっと、壁の“湯葉饅頭”っていう字を見ながら討論してたんだよ。なのに誰も気がつかなかったんだから、みんな同罪だと思うんだけどな・・・。というわけで、この日はその後、ずっと「ゆぱまんがしら」という言葉をサカナに、お酒を飲み続けていた私達であった。 |
さて、「ゆばまんがしら事件」があった約一週間後。六本木で、SUGIZOのバースデー・パーティーが開かれた。用事で欠席したINORAN以外のLUNA SEAのメンバーやDAISUKEも顔を見せ、パーティーはアットホームに盛り上がっていた。その二次会に仕事を終えてかけつけたHIDEちゃん。時刻は午前2時。パーティーが始まったのが午後9時だったから、単純に考えても、みんなとは5時間の時差がある。当然、そのお店が閉店した4時になっても、目をきらきらと輝かせながら、「次、行くっしょ」と、ニコニコしている。ところが、LUNA SEAチームは翌日仕事が早いからと、無言の「帰りたい」光線を発散。いつもはとことん付き合いのいいSUGIZOも、「今日はダメなんです」と言って、パッと帰ってしまった。 そこで、残ったメンバーで例の24時間居酒屋へゾロゾロと移動。一週間前と同じテーブルを囲むことになった面々は、HIDE、哲っちゃん、薫ちゃん、大谷ちゃん、私、ウツミン・・・・・・。ところが、HIDEはLUNA SEAと充分に遊べなかったのが、かなり心残りだった様子。そしたら誰かが、「LUNA SEAは来週、名古屋でコンサートをやる」という情報をHIDEの耳に入れた。途端に、ニタリと笑ったHIDEちゃん。すぐさま自分のスケジュールを調べ、「よし、みんなで名古屋へ行こう!」と、提案した。ただの「勢いの塊くん」と化したみんなは、二つ返事で全員がOKした。 | |
HIDE | 「ただライブを見に行くだけじゃつまらないから、何かいたずらしよう!」 |
薫 | 「名古屋のカルト的バンドがLUNA SEAを見にきたっていう設定にしたら?」 |
HIDE | 「それいいね。名古屋で10年以上活動しているバンドで、名古屋じゃ誰も頭が上がらないっていうことにして・・・」 |
哲 | 「それで、『LUNA SEAからの挨拶がない』って、怒ってるってことにしよう!」 |
薫 | 「バンド名は何にする?」 |
すくっと立ち上がって叫んだのであった。 | |
HIDE | 「よぉし、バンド名は、ゆばまんがしらだぁ!」 |
その後、私たちは延々と2時間あまりも、架空のバンド「ゆばまんがしら」がLUNA SEAのライブを見にきたというコンセプトを完成させるための計画を練りに練った。「ゆばまんがしら」の音楽性はもとより、バンドの歴史、曲のタイトル、衣装まで、ぜ〜んぶ決めたのだ。ああ、ただの酔っ払いがまた馬鹿なことを・・・・・・と思う読者の方もいるかもしれないけれど、こういうヒョンなことから世界的なバンドが生まれることだって、世の中にはあるかもしれないよ!!(んなわけ、ないか)。 |
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