先月号から、突然始まってしまったこのページ。第一回目は、とりあえず「ゆばまんがしら」という奇妙な名前の由来を説明しましたが、いったい何がどうなっているのか、よくわからなかった読者の方もいらっしゃることでしょう。まぁ、てっとり早くいってしまえば、HIDEちゃんとその奇妙な飲み仲間達が巻き起こす、珍騒動顛末記とでもいえるかな。実は、本人たちは、単なる酒飲み集団ではなく、「日本のエコール・ド・パリ」だと信じているのですが、誰もその意見に賛同してくれないのが悲しいところです(笑)。

 さて、今月号の「ゆばまんがしら」は、タイトルにふさわしく、温泉レクリエーション日記をお届けしましょう。

 Xが渡米するまで、あと数週間になったある日の夜。HIDEちゃんは哲ちゃんのアトリエでヘアのメンテナンスをした後、夜の10時頃から、いつものようにみんなで、食事という名を借りた酒宴を始めていた。ちょうどこの頃、HIDEは渡米が秒読み段階となり、リハーサルやらミーティングやらで、かなり忙しい毎日を送っていた。

 そんなことが話題になった時、誰かが「HIDEちゃんがアメリカに行っちゃうと、寂しくなるね」とポツリ。とたんに、その場の雰囲気がちょっぴり暗くなってしまった。HIDEはみんなに「飲もうよ」と声を掛ける招集係であるだけではなく、お酒の席がいつも楽しく盛り上がるように、さり気なく気をつかってくれるからである。

 そのうち、誰からともなく、「HIDEが渡米する前に、一泊で温泉に行こうよ」という話が持ち上がった。意外かもしれないけど、ミュージシャンって温泉好きな人が多いのだ。いろんなバンドが温泉付きのスタジオでレコーディングしてるし、個人的に温泉に遊びに行ってる人も結構いる。だから、この提案にはみんながすぐに賛成し、それぞれのスケジュール帳を調べ始めた。ところが、自分のスケジュール帳を見ていたHIDEが、

「俺、渡米までに空いてる日って、明日とあさっての二日間しかない!」
と、爆弾発言。そして、
「こういうことは決めたら早い方がいいから、明日、行こうよ!」
と言い出し、お酒の勢いも手伝って、あっという間に翌日の温泉行きが決まってしまったのだ。しかし、時刻はすでに夜中の2時。翌日は土曜日なので、今から旅館の予約が取れるのだろうかというこちらの心配にはお構いなく、HIDEは、
「んー、盛り上げ役が必要だな。よし、SUGIZOを呼ぼう」
と、即座にSUGIZOの家に電話をし始めている。こういうことになると、HIDEは本当に行動が早いのだ(笑)。果たして、SUGIZOは珍しくこの時間に家にいた。このころの彼は超ハード・スケジュールで、いつも夜中遅くまで仕事をしていたのだが、この日たまたま家にいたのは、HIDEの念力が通じたからだろうか。しかも、翌日は昼間にテレビの仕事があるだけで、夕方以降は暇だという。他のメンバーはラジオの仕事で、その後に北海道に行くのだが、たまたまSUGIZOはオフだったのだ。ああ、なんという幸運(?)。

HIDE 「SUGIZO、明日、温泉にいくぞ!」

SUGIZO 「はぁ…?」

HIDE 「とにかく、テレビの仕事が終わったら、着替えのパンツ一枚持って、哲ちゃんのアトリエに集合だ!」

 というわけで、SUGIZOの参加が決定した。そして、この日の飲み会は、

 「明日の夜には(温泉で)思う存分飲めるから今日は早く帰ろう」と、いつもより早めにお開きとなった。といっても、朝の6時だったけど……トホホ。

イラスト・ひーchan