なにがあっても打ち上げの巻

懺悔、その後

 先月号の「今月の困ったちゃんスペシャル」に対する、業界内の反響は非常に大きかった。SUGIZOは会った瞬間、

 「大島さん、相変わらず、やってますね〜」とニタニタしてるし、屍忌蛇とTOSHIからは、

 「しばらく会わなかったから、また海外にでも逃亡してるのかと思ったら、浦安なんかにいたんですね」と笑われるし…。その他、各編集部の人やレコード会社の人からも、「まったく、もぉ」と、冷たい目で見られてしまった。なのに、あの文章を読んだHIDEは、

 「またいつもの癖で、自分を美化している。今度から、俺が『うらまんがしら』で、真実を書いてやる!」と、さらに追い打ちをかけるようなことをいう。

 「あのページの隅にスペースをもらって、毎月、『と、大島は申しておりますが……』で始まる文章を書くっていうのは、いいアイデアでしょ」と彼がいうと、横にいたウツミンは大喜び。指をパチンパチンと鳴らしながら(これは、ウツミンがノッてる時によくやる癖)、

 「それ、いきましょう」とニコニコしている。しかも、彼は先月号のイラストをPONPONに発注する時、「大島さんが酔っ払っている時の絵は、必ず書いてください」と、わざわざ指定までしていたとか。編集長自らわざわざそんな依頼をするなんて、その事実を知ったわたしは、ちゃんと懺悔をしてもみんなにいじめられるくらいなら、もぉ、自分のことなんか、絶対に書かないからね、フン!……と思ってしまったのだ。でも、ここまで原稿を書いたら、 「そんなのは、絶対に許さん!」というピンクの怪獣の雄叫びが、どこかから聞こえてきたような気がした。ひぇ〜、HIDEちゃんが、いつ、「うらまんがしら」の原稿を書く気になってしまうか、戦々恐恐として日々を過ごす大島なのであった……

 先月号のグラビア・ページにもあったように、3月上旬の1週間、HIDEとTUSKの映像作品の撮影が行なわれた。なにしろ、連日平均睡眠時間は3時間という超強行スケジュール。でも、出演の二人をはじめとして全スタッフが一致団結し、いい作品を作るため、本当に頑張っていた。わたしもこの撮影には全日密着取材をしていたのだけど、思わず手に汗を握ったり、感動のためにウルウルしそうになったり、数々のドラマに遭遇した。この時の様子(もちろん、裏話もね)は、近々、みんなにもお伝えできると思うので、楽しみにしていてね!

 しかし、撮影が終わり、その数日後に渋谷公会堂で行なわれたイベントで会って以来、HIDEちゃんは謎のお籠もりを始めてしまった。とにかくどこでも会わないし、誘いの電話もない。ど〜やら、どこかに潜んで、またなにかを企んでいるらしい。そんな彼が、4月1日に渋谷公会堂で行われるLUNA SEA のファンクラブ・ライヴにあらわれるらしいという情報が伝わってきた。そこで、その2日前の深夜に、HIDEちゃんのうちにTELをした実は、HIDE&TUSKの映像作品用に彼が作った曲を、ダビングしてほしいと前々からお願いしていたのである。この曲は最終的にTUSKのヴォーカルが入る予定なのだか、その前の時点でも超カッコいい! 撮影の時にずっと流していたのを聞いて、わたしは、ぞっこん惚れ込んでしまったのだ。

 「多分、本人はいないだろうから、留守電にメッセージを残しておこう」と思ったら、なんと本人がひょっこり電話に出た。しばらく会ってなかったので近況報告などをしているうち、やっぱり、話はお酒のことになった。なんとHIDEちゃんは、あの渋公以来、約二週間半の間、一度もお酒を飲んでいないのだそうだ。

「ところで、最近、飲んでる?」
「いや〜、ここんとこ、地味だよ」
「哲ちゃん、飲んでるのかな」
「LAに行ったり来たりで、超忙しいみたいだから、飲んでる暇なんかないんじゃない?」
「SUGIZOとか、どうしてるのかな?」
「LUNA SEA も、今月はアルバムが出るんで取材月間だから、すごく忙しいみたいだよ」

 私の答えを聞いて、彼は、

「そっか〜、みんな、飲んでないんだ、よかった」

だって。自分だけじゃなく、みんなも飲んでないと知って、なんかホッとしてるみたいだったよ(笑)しかも、その直後、彼は突然、

「あ〜っ、酒、飲みて〜っ!」

と、受話器に向かって叫んだのだ。その声のデカかったことといったら……。私は思わず、受話器を耳から30センチも離してしまった(笑)。しかも、それから、ものすごい事実が発覚してしまった。彼はこのライヴの日、撮影が入っているのだそうだ。でも、どうしてもLUNA SEA のライヴを見たいから、朝6時からスタジオで撮影を始めることにしているのだとか……。もぉ、この根性には、言葉も出ない。呆気にとられたまま電話を切った私の頭の中には、さっきの「あ〜っ、酒、飲みて〜っ!」というHIDEの心の叫ぴが、しばらくの間、ぐるんぐるんと回っていたのであった。

イラスト・ひーchan