LAでジェットコースター三昧の巻 後編

HIDEの顔がないっ!!

 さて、どうにかこうにかコロッサスの乗り場までたどりついたわたしたちは、とりあえず腹ごしらえということで、みんなでハンバーガーを食べることになった。しかし、すっかり憔悴しきっていたPATAちゃんは、この頃になるともうビールのビの字も口に出さない。結局、コロッサスにも乗らず、とにかく体調が悪そう。HIDEも

「PATAがどんどんしぼんでいくような気がして、これ以上、遊ぼうとは心苦しくて言えない」

と、言っている。そこで、みんなで相談して

「あとひとつだけ乗ったら、帰ろう」

ということになった。

 その栄光の最後のコースターに選ばれたのが、「ヴァイパー」というジェット・コースターのお化けみたいな乗り物だった。地上70メートルのところで、二回連続ループやらひねりを加えた回転やら、いろんな技がテンコ盛りの見るからに恐そうなコースターだ。このマジック・マウンテンでもいちばん恐いという評判の乗り物だけに、行列も超長い。またまたお休みのPATAを除いた一行が列に並んでいると、頭上からこの世のものとは思えないすさまじい悲鳴が聞こえてくる。その声を聞きながら、嬉々として先頭の席を確保するべく、別の列に並んでいるHEATH。前から彼がスピード狂だという話は聞いていたが、これほどのものだとは……。一方のHIDEは、順番が近づくにつれて、だんだんと無口になってしまう。

「こいつを制覇すれば、俺はジェット・コースターに勝ったことになる」

とか、ブツブツとつぶやいているが、緊張していることは傍目にもありありとわかる。30分くらい並んで、ようやくわたしたちの番がやってきた。

 席に座ると先程と同じく、前フリ&ワビサビまったくなしの、いきなり本番だっ! ヒューン、グルグル、ゴォーッ……と、なにがなんだかわからないうちに、恐怖の1分半はあっという間に終わってしまった。いやぁ〜、あれを言葉で表現するのは、難しすぎる。この時ばかりは後ろに座っていたHIDEの妙ちきりんな悲鳴も、まったく耳に入らなかったほどだ。停止したコースターから立ち上がると、地面がぐらぐらと揺れ、歩くのがやっとという状態。ようやく出口にたどりつくと、そこにはなぜか黒山の人だかりができている。

「なんだろう?」

と思ってのぞいてみると、それはカメラが乗っている人全員の表情を写し(しかも、回転している瞬間の)、それをプリントして売ってくれるというコーナーだった。

 面白そうなのでメンバーの写真を探してみたら、まず先頭に乗っていたHEATHを発見。両手を高くあげて、本当に楽しそうな顔をしている。あの状態でこんな余裕の笑顔を見せられるなんて、ヤツはやっぱりただ者じゃないぞ……。それから、HIDEを探したのだけど、なぜか彼の写真が見つからない。よぉく見ると隣の人は写っているのに、なぜかHIDEだけが写っていないのだ。

「あれ、HIDEはいったいどこに?」
と思ってその写真をさらによく見つめてみたら、なんと彼は被っていた黒い毛糸の帽子を、すっぽりと顎の下まで伸ばして黒子のような状態になっていたのだっ! これにはもぉ、みんな大爆笑。いくら恐いからって、帽子で顔全体をおおって、ジェット・コースターに乗るヤツがいるだろうか。本人は目隠しのつもりだったらしいが、あまりにも妖しすぎるその姿……やっぱりヤツも、ただものではなかったということだネ……(笑)。

 こうして、無事に「ヴァイパー」も制覇し、夕焼けのマジック・マウンテンをあとに、わたしたちは帰路についた。帰りの車の中は、みんな行きとは正反対に睡眠タイムで静まり返っていた。そして、PATAちゃんの家に着くと、彼は

「じゃあな」

という寂しげな言葉を残し、一人家の中へと入っていった。その後ろ姿に、哀愁が漂っていたことは、いうまでもない。

「彼の今日一日は、いったいなんだったんだろうね」

というHIDEの言葉に、一同は黙ってうなずき、貴重なPATAの休日を台無しにしてしまったことを心の中で詫びたのだった(ホントかな……笑)。PATAちゃん、本当にお疲れ様でした。

イラスト・ひーchan