ロックンロール日記
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音楽業界への道

 ◆最終回 いちばん大切なことは
 一年にわたり続けてきましたこの「音楽業界への道」ですが、いよいよ今回が最終回になりました。この一年間、業界で働きたいと思うたくさんの方からメールをいただき、励みになったり、「全然、わかってくれてない(涙)」とガッカリしたり、いろんなことがありました。

嬉しかったのは、やはり、「もっと頑張ろうと思いました」「自分の行きたい道がわかりました」という前向きなご意見。

このページを手がかりやヒントにして、ちゃんと自分で考えて決心した人には、本当に大きな拍手と「頑張れ!」というエールを送りたいです。それから、意外に基本的な音楽業界の仕組みとか、業種職種の違いを知らなかった人も多くて、それは逆にわたしのほうが驚きでした。でも、よーく考えてみれば、音楽業界という特殊な世界の構造なんて、学校の授業で教えてくれるわけじゃなし、普通はわからなくて当たり前です。わたしだってこの世界にどっぷり浸かってお仕事するようになってからでも、知らなかったことがたくさんありますから。でも、政府のトップシークレットというわけじゃないので(笑)、知ろうと努力すれば知る手段は必ずあるはず。一覧表みたいになってて、一目でわかるものはないかもしれないけれど、こまめに調べていけばおおよその情報はゲットできると思うのです。
 実際に、「今までこのHPを知らなかったけど、業界のことを知りたくていろいろ調べていたらたどりつきました」という人もいました。時間はかかるかもしれないけれど、自分でコツコツ調べるという努力と熱意が、結局は自分のためになるのだと思います。「どうやって調べたらいいんですか?」なんていってるようじゃ、駄目です。昔、わたしは知りたいことがあるとよく国会図書館に通って、昔の音楽雑誌のバックナンバーなどを読み漁って情報を得たけれど、今はインターネットという便利なものがあるじゃないですか。雑誌や本も多く出ているし、大学や専門学校の無料セミナーなど、生の声が聞ける講習会もたくさん開かれています。たとえ、自分が知りたいと思うこととは少し違っているとしても、無料セミナーなどへは積極的に参加して、バンバン質問しましょう。参加してただ黙って聞いているだけでも、何もしないよりはマシかもしれないけれど、せっかくのチャンスなんだから知りたいことは自分からどんどん聞いてみること。そういうところから、道は開けていくのだと思うのです。

一方、ガッカリしたのは、「わたしはどの学科に行けばいいのでしょうか?」「どうしたらいいのでしょう」という類のメール。

途中で「このページは進路相談じゃないんだ」と思い、「やりたい道に進むために、遠回りを恐れてはいけない」というAnchangの話を紹介したりもしたのですが、その後もそういうメールはとても多かったです。「わたしの文章が悪くて、意図が伝わらないのだろうか?」と、マジにへこみましたよ。

 大学だろうが専門学校だろうが学科がなんだろうが、何でもいいんです。もっというと、何かの事情で学校に行けないのであれば、それでも別に大きな支障になるとは思いません。音楽業界に入る方法は何百通りもあるのだから、学校よりも大切なのはその人の心構えだと思うのです。高校中退でも地道にローディの付き人をやって、アーティストの信頼を得て最終的にはすべてを統括するチーフ・マネージャーにまで上り詰めた人もいます。もちろん、最初の頃の仕事は「タバコ買ってきて」とか、ただのパシリだっだだろうことは、想像がつきますよね。専門知識を勉強することも大切ですが、いちばん大切なのは熱意と自分で考えて決めていく行動力だと思うのです。こういうことを書くと、必ず、「では、ローディの付き人になるには、どうしたらいいんですか?」という質問が来ると思うのだけど、そういう人には声を大にしていいたいです。「自分で考え、自分で捜しなさい!」と。

 それは、勉強は全然しなかった大学にしても、大学3年のときに通った二つの専門学校にしても、得るものがとても多かったという自分の経験からいえることです。とくに、DJの神様といわれていた故糸井五郎先生のDJコースに行ったことは、わたしにとって転機といえるかもしれません。この業界に入るきっかけとなったNHKのラジオ番組のオーディションを知ったのはその学校の掲示板の張り紙でしたし、テレビのレポーターのオーディションに推薦してくれたのは糸井先生だったからです。糸井先生のDJコースは人気のクラスだったので生徒はたくさんいたけれど、わたしはいつも授業が終わると先生に質問するために居残りをしてました。番組の手伝いとか資料整理などにも、積極的に参加しました。とにかく第一線で活躍している先生の話を聞くのがとても楽しかったし、先生のお手伝いをしながら垣間見る音楽業界がとても刺激的だったからです。その結果、先生はわたしの名前を覚えてくれて、いくつかのチャンスを与えてくれました。その頃、わたしと同じようにいつも先生の周りにくっついていた生徒が5〜6人いたのですが、その後、みんな職種は違うけれど音楽業界で働いてました。当時はただ楽しいだけのように思っていたけれど、今振り返ると、きっと、みんな、何とか音楽の仕事をするきっかけをつかみたくて、必死だったんでしょうね。

 というのは、大学2年の頃から、当時、東京ではいちばん大きかったロック系のイベンターが発行するフリーペーパーで記事を書いていたし、ロック喫茶でバイトもしていたからです。ロック喫茶時代の仲間なんて当時はただの不良としか思えなかったのに、その後、大きな事務所の社長やプロのミュージシャンになった人が何人もいるのがおかしいです。学校に行けばまず最初に掲示板を見てオーディションはないかチェックしていたし、フリーペーパーをもらえば必ず最後のページを開いてライター募集の広告を捜してたような子でしたからね。きっとなんらかの形で、音楽に関わる仕事をするようになってたと思います。

 今回の文章を読んで、「なるほど。そういう方法もあるのか」と思ってくれてもいいし、「でも、それはあなたのやり方でしょ。わたしは他の方法を見つける!」と思ってくれても、OKです。

これは音楽業界に限らないことだけれど、そういう根本的な心意気がいちばん大事だと思うのです。昨年の4月にこの連載を始めたときには、最終回は違う内容のことを書こうと予定していたのですが、実際に1年間、みなさんの声を聞いて「今、音楽業界を目指す人たちに、いちばん必要なことは何だろうか?」と考え、感じたことを書くことにしました。
 この連載が、みなさんが何か行動を起こすきっかけやヒントになったり、ためらっている人の背中をぽんと押すことができれば、とても嬉しいと思います。ガンバッテくださいね!
 
 
大島暁美のロックンロール日記