店を出た後、TOSHIは家が近いからとそこで帰ってしまったのだが、ハリウッド方面に帰る他のみんなは、これからHIDEの家に行ってまた飲もうということになった。LAでは夜中の2時を過ぎるとお酒を売れないという法律があるので、この時間になると、お店ではもう飲めないのだ。その帰り道、HIDEが

hide「オープン、オープン」

と叫びながら、わたしの運転する車に乗り込んできた。わたしはLAでオープンカーを借りていたのだが、夜は寒いので幌をかけていたのだ。それで、それまで助手席に乗っていたウツミンが、トレードでもう一台の車に。屋根を開けたHIDEは後部座席の後ろの台の上に乗って、

hide「わ〜い、やっぱりオープンカーは気持ちが良い!」

とはしゃいでいる。わたしの車の前にはウヒョヒョンが運転する車が走っていたのだけれどHIDEは、

hide「横に並んでしまえ!」と言ったかと思うと、

hide「抜いちゃえ、抜いちゃえ!」と叫んでいる。

途中でHIDEのマニュピレーターの稲田さんもこっちの車に移ってきて、

hide「走れ! とばせ! 赤でも止まるな!」

と二人で大騒ぎ。ところが、ウヒョヒョンも意地を見せて、どんどん加速してくる。途中、道中ずっとカーチェイスもどき(?)を繰り広げて、二台の車はハリウッドに戻って来た。ところが、あと数ブロックでHIDEの家につくというところまで来て、彼は突然、

hide「そうだ。これから東京ヤンキースをさらいに行こう!」

と言いだした。出たっ! HIDEのお得意の誘拐作戦。私が、

akemi「もう一台の車に言っておかないと、みんな心配するんじゃない?」といっても、

hide「そんなの平気、平気。行っちゃおう!」

と、ひたすら元気がいい。そこで、わたしたちの車は行く先を変え、ヤンキースの泊まっているホテルへと向かった。

 深夜のホテルのロビーは静まり返っている。でも、メンバーの部屋番号が解らないので、眠たそうなフロントのおじさんを起こして番号を聞き、AMIちゃんの部屋に電話をした。

akemi「もしもし、AMIちゃん、ねてた?」

AMI「(超眠そうな声で)あれ、どうしたの?」

akemi「今、ホテルのフロントにいるの」

AMI「ん〜?なんでぇ?」

akemi「これからHIDEちゃんちで飲むから、迎えに来たんだ」

AMI「え〜っ!!」

akemi「今、HIDEちゃんにかわるね」

 電話をかわったHIDEは、必死にAMIちゃんを誘っている。でも、彼が深い眠りの中にいたことは間違いない。言葉ははっきりしているのに、なんかフニャフニャしているからだ。しばらくして、がっかりした表情でHIDEが受話器を置いた。

akemi「どうだった?」

hide「駄目だ、あいつ、口では『行きますっ』て言うんだけど、寝ボケてるみたい。かわいそうだから今夜は止めにしておこう」

 ということで、わたしたちはヤンキース誘拐作戦を断念して、HIDEの家へと引き返した。すると、HIDEの家の駐車場の前で、真っ青な顔をしたウツミンが立っているではないか。そりゃそうだよね。わたしたちの車が突然消えてしまってから、もう40分近くたっている。犯罪都市LAの深夜、しかも、あんなカーチェイスのあと……。誰でも事故にでもあったのでは!?って心配になっちゃうよね。ウヒョヒョンは車で近くを探しに出かけたという。

「ごめんね〜っ、ヤンキースをさらいに行ったんだけど、失敗しちゃったんだ」

と明るく言うわたしたちに、ウツミンは怒るのを通り越して、ただただ口をあんぐりと開けていた。心配をおかけした皆様、どーもすいませんでした(笑)。

イラスト・ひーchan