他にもhideの酒の上でのエピソードは山のようにあるのだが、だからといって彼がいつも飲みまくっていたのかというと、そうではなかった。ツアー中とか普段の時は飲まない日は滅多にないといっていたが、いったん考えモードに入ったり曲作りに入ったりすると、パッタリ飲まなくなってしまうようだ。とくに、ソロ活動を始めて家でプリプロなどをするようになってからは、長期間にわたって飲まない日が続くことも少なくなかったらしい。LAにいる彼を訪ねると、「もう2週間以上も、一滴も飲んでないよ」なんていうこともめずらしくなかった。 こんなところからも、オンとオフをきっちり分ける彼の素顔が見えてくる。遊びたいときは思い切り遊び、飲みたいときはとことん飲む。けれど、いったん何かに熱中し始めたら、今度は全てのエネルギーをそちらに注ぎこむ。それは、ときどき「ストイックすぎるな」と感じるほど極端なこともあったが、彼のまっすぐな性格はそうしないと気が済まなかったのかもしれない。 |
最初のソロ・ツアーの時、彼はライブの前の日はなるべく飲まないように気をつけていた。あれだけ仲間とツアー先で飲むのが大好きなhideが、本番の前の日はホテルから一歩も出なかったというのだ。もちろん、それは「酒を飲み過ぎると、喉の調子が悪くなる」からである。「酒で喉をつぶして悪いステージを見せちゃったら、お金を払って見に来てくれるお客さんに悪いから」と、ツアー先のホテルのロビーで彼はいつになく真面目な表情で語っていた。それは彼のミュージシャンとしてのプロ根性の証であり、初めてヴォーカリストとしてステージに立つことへの緊張感のあらわれでもあった。そのかわり、翌日がオフだったり移動日だったりすると、前日の分まで飲んで騒いでしまうのだという。「おかげで今回のツアーは、一日おきに超重い二日酔いだよ」と、彼はちょっと誇らしげに笑っていた。 |
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これは、彼のヴォイス・トレーナーから聞いた話だが、hideはレコーディング前に一つの曲を何十回も何百回も録音してみるのだという。そして、普通の人が聞いたら違いがわからないような細かい点まで、チェックしているのだそうだ。ヴォイス・トレーナーが「なんでもうOKが出てるのに、そんなに歌い直すの?」と尋ねたら、「同じように聞こえるかもしれないけど、500回目に歌った歌よりも700回目に歌ったほうが絶対にいいんだよ。ちょっとでもよくなるんだったら、ぼくは700回でも800回でも歌い直す」と、答えたという。そんな不器用なまでの生真面目さが、彼の原点なのかもしれない。 歌う時も、音楽を作る時も、酒を飲む時も、遊ぶ時も、いたずらする時も、生真面目なほど真っすぐに全力投球してきたhide。でも、天国にまで全力投球していっちゃったのは、ちょっと早すぎたんじゃないかなぁ……。 |
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