「どうして?」

「巨人が、負けてるんだよ(笑)」

 たしかに、隣の部屋からはテレビに向かって、必死に声援をしているPATAの声が聞こえてくる。しばらくして試合が一段落すると、ようやくPATAがテレビのある部屋から出てきた。

「巨人が勝ちそうなメドがついてきたから、そろそろ行こう」

という彼のひとことで、わたしたちは待ち合わせの店に向かって出発することにした。

車で15分ほど走って、お店の前に車をつける。SUGIZO、KIYOSHIと一緒に車を降り、うしろに停まっているPATAの車のほうを見ると、彼はまったく降りようとする気配がない。3人で車をのぞきこんだら、PATAは車の中にあるテレビで、またまた野球の試合の続きを見ていた。

「今、いいところだから、ちょっと待ってて」

というので、3人で歩道にボーッと立っていたら、そこへ見回りの途中らしきおまわりさんが通りかかった。そして、不思議そうに、SUGIZOとKIYOSHIのことを見ているのだ。そりゃ、KIYOSHIはド金髪だし、SUGIZOは赤くて長いし、車の窓から顔を出しているのは黒くて長髪のHEATHだし、その奥にいるのはPATAだし……。これは、驚くのも無理ないかもね(笑)。でも、SUGIZOが

「こ苦労様」

といったら、彼は「どうも」と微笑んで去っていった。そのあと、SUGIちゃんは

「おまわりさんが挨拶を返してくれたってことは、俺は善良な市民に見えるってことっすね」

と、無邪気に喜んでいたよ。

 さて、一行がお店に入ると、すぐにGEORGEさんがスタイリストのYUMITOさんと一緒にやってきた。HIDEが仕事の都合でどうしても来れないと聞いて、ちょっと寂しそうな顔をしたGEORGEさんだったけど、久しぶりにみんなと会えてとても嬉しそうだ。ひとしきり挨拶を終えた後、メニューを食い入るように見ているのはHEATH。

「スパゲティを頼んでもいい?」

と聞くので、

「でも、食事は次の店でしようってことになってるんたよ」

といったら、子供みたいにシュンとしてうなだれていた。よっぽどお腹が、空いていたんたろうね(笑)。実はこの日は日曜日だったので、遅くまでやっているレストランがみつからず、とりあえずこの店で待ち合わせをして、次に行く店を決めて移動しようということになっていたのだ。一応、私はびあ・グルメマップを持ってきていたので、みんなで見ながら「どこに行こうか」と相談していた。その時になって来たのが、哲ちゃんと薫ちゃん。しかし、二人は席に着くなり、「このメンバーが店の中で、びあ・グルメマップをのぞきこんでいる光景は不気味すぎる」という。しかも、その店は喫茶店ではなく、一応、イタリア料理のレストラン。お店の人たちは、わたしたちを相当おかしな集団だと思ったことだろうね(笑)。

 結局、朝の4時までやっていると本に載っているイタリアン・レストラン(!)を見つけて、またまた車で移動することになった。ところが、その店の近くには車を停めるスペースがない。駐車場所を探してノロノロ運転をしていると、突然、SUGIZOが

「大島さん、あのガソリンスタンドに停められるよ」

といいだした。彼が指差しているのは、閉店したガソリン・スタンドだ。ちゃんとわたしたちのような不埒者が侵入しないように、敷地のまわりをロープで囲ってある。なのに、KIYOSHIも

KIYOSHI「あそこなら、絶対に駐禁、取られないよ」

という。結局、二人がヤイヤイいうので、ロープをくぐって、スタンドの真ン前に車を停めてしまった悪い子の私。

「お店の人に見つかったら、怒られるだろうな」

と心配していたら、KIYOSHIは「最初からここに停まってましたって感じで、全然違和感がないよ」と、妙な気休めをいってくれる。ガソリン・スタンドの中に堂々と車が停めてあるのを見たHEATHが、「すごいとこに、停めたねぇ」と目を丸くしていると、

「さすがだよね〜普通、あんなとこには停められないよ」

とのたもうた「ことの発端」SUGIちゃん。

「ここに、停めよう」

っていいだしたのは、いったい誰なんだよぉ〜!(笑)。

イラスト・ひーchan