ロックンロール日記
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音楽業界への道

 ◆第二回  専門知識が必要な仕事とそうでない仕事について
  前回は、音楽業界にはどんな仕事があるのかについて、大雑把にあげてみました。ひとことで音楽業界といっても、多種多様な職種があるということがわかっていただけたでしょうか。職種がたくさんあるということは、その仕事によって向いている人と向いてない人がいるし、仕事に就くまでの方法もいろんなパターンがあるということになります。だから、「こうすれば、音楽業界で働くことができる!」なんていう
パターン化されたマニュアルは、まったく存在しないのが実情です。たとえばお医者さんだったら、大学の医学部に入学して、6年間勉強してインターンを経て、一人前の医者になる……という過程がハッキリと決まっていますよね。つまり、道が一本なわけです。でも、音楽業界にはその道が無数にあるので、逆に音楽業界を志す人は「いったいどんな道があるのだろう」「どの道を選べばいいのだろう」と、悩んでしまうのだと思います。

 ただザックリ考えると、専門的な知識の必要な職種と、そうでない職種に分かれると思います。
専門的な技術の必要な職種は、それ専門の知識を身につけることがプロフェッショナルになるための必須条件である仕事です。
たとえば、前回あげた職種の中でいうと、エンジニア、照明、楽器テクニシャン、カメラマン、ヘアメイク、デザイナーなどがこのグループに入ります。このような職種は基本的な知識がしっかりしていないと仕事はできないので、まず専門の学校に行って勉強するか、プロとして仕事をしている人のアシスタントになるかして、基礎を学ばなければなりません。たまに独学という人もいますが、ほとんどの人はきちんと勉強をしています。たとえば、あの巨大なPAを操るエンジニアは、かなりの専門的知識と技術を必要とします。なによりもまず、何百個も並んでいるあのつまみの使い方を知らないと、アマチュア・レベルでも話になりません。
また、カメラマンも露出とか光の使い方、構図などを知らないと、雑誌のグラビアページを飾るような写真を撮ることはできません。プロのアシスタントとして仕事を覚えていくときも、これらの基本的知識がないと、まず、アシスタントとしてやとってもらうことはできないでしょう。音楽業界のお仕事は感性が大切だということは事実ですが、専門的な知識がないといくら感性が鋭く優れていても、仕事をしていくことはできない職種も多いわけです。

一方、経験や知識はあったほうがいいけれど、最初から専門的な技術がなくても仕事につける職種もあります。
プロダクション、レコード会社、コンサート・プロモーター、新聞雑誌編集、ライター、ファンクラブ・スタッフ、テレビラジオ局、CM制作、広告代理店などが、そのグループに属します。これらの仕事は基本的には義務教育で習うだけの知識があれば、あとは本人のやる気とセンス次第で仕事に就くことが不可能ではありません。大手になれば新卒を募集している会社もありますし、それ以外にも求人情報誌などで未経験者でもOKということで募集していたりもします。
その中でも、仕事に就くきっかけとしていちばん多いのがいわゆるコネといわれるものですが、これは別に「親がテレビ局のお偉いさんである」なんていう特殊な状況である必要はまったくありません。いつも話していることだけれど、コネは自ら作るものであり、捜すものなのです。ツテになりそうなところには片っ端から自分を売り込むとか、ありとあらゆる情報を入手してなんとかコネクションを作るようにする…… 等々。小さなツテを手がかりに、そこからやる気と実力を発揮し、それが認められて晴れて正式に音楽業界の仕事に就いたという人たちは、数限りなくいます。

 ただこれらの職種は専門的な知識が必要不可欠ではない分、誰にでもなるチャンスがあるというプラス面がある一方、他の人との差をしっかりアピールできないと仕事を得ることができない、仕事に就いてからも他人の何倍も頑張らないとすぐ他の人と変えられてしまうというマイナス面があります。「誰にでもなれる」ということは、逆に「あなたでなければできない」ことが必要なのだということです。プロダクションに入社するためには普通に試験に合格すればいいのだけれど、いざ現場でプロのマネージャーとして働こうと思ったら、業界のしきたりや仕事の手順を覚え、周りにもタレントにも気配りを忘れず、仕事が効率よく回るように考えなければいけない……と、やらなくてはならないことがたくさんあるのです。ライターもただ原稿を書くだけだったら中学校の国語の授業を受けていればできる仕事ですが、プロとして読者に原稿を読ませるためには筆力と表現方法のノウハウ、インタビューの仕方などを覚えなくてはなりません。だから、専門知識がない職種の方が就きやすいのかと問われたら、決してYESとはいえないと思います。

 次回は、音楽業界に入ることに成功した人たちのいくつかの実際例をあげて、具体的にどのようなパターンが存在するのかを検証してみることにしましょう。 
 
大島暁美のロックンロール日記