ロックンロール日記
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音楽業界への道

 ◆第八回 ライターになるために必要なこと
 最近、ライター志望の方から、いろいろな質問メールをいただきます。そろそろ来年の進路を、決定しなければならない時期になっているからでしょうか。 質問メールの内容はだいたい似ていて、やはり「どうやったら、ライターになれるか」ということに尽きますね。これに関しては、毎回のようにいっていることですが、ひとことで正解をズバリということはできません。それぞれ心構えや環境も違うし、状況や運も違いますからね。でも、そんな中にも、大雑把な道筋のようなものはあるのではないかと思います。今回は、なるべく多くの人が知りたいと思っていることをベースに、わたしや身近な人たちの経験を元にして、話を進めていきたいと思います。

(1)学歴は、必要なのか?

 これは、ものすごく多い質問です。大学に進学したほうがいいのか、学部はどこを選ぶのがいいのか、専門学校で専門の教育を受けたほうがいいのか、高卒でも大丈夫なのか……等々。それぞれ自分の環境を考えた上でこういう質問をしてくるのでしょうが、ハッキリいって、「学歴はまったく関係ない」と思います。実際、現在、ライターとして活躍している人たちの学歴は、さまざまですからね。

ライターにいちばん必要なものは、相手から面白い話を聞き出すためのインタビュー力と、それを読みやすく説得力のある原稿にまとめる文章力の二つに集約されます。
他にも、人間関係をきちんと作るとか、音楽の知識とか、常識的な範囲で必要なものはいくつかありますが、基本的にこの二つがいちばん大切だと思います。そして、この二つの力は、学校で勉強しただけでは身につかないものなのです。だから、学校は二次的なものと考え、まずはライターとして最低限必要な文章力とインタビューのセンスを養うことを考えましょう。そのためには、とにかく読むこと。雑誌の音楽記事を読むことで原稿の書き方やインタビューの仕方はある程度わかると思いますが、やはり文章を書くことのプロになろうと思うのならば、ジャンルに関係なく本をたくさん読むことをお勧めします。 ただ、これは決して大学や専門学校に行かなくてもいいという意味ではありません。もし、そういうチャンスがあるのであれば、進学することは決して無駄ではないと思います。ライターには年齢制限がないので、いろんな経験を積んだほうがゆくゆくは自分自身のためになると思うからです。ただ学校に行ったからといって何の努力もしなかったら、ライターになることはできないでしょう。結局は、いかに自分自身で勉強するか、道を切り開いていくかということに、かかってくるのだと思います。ちなみに、わたしは大学の経済学部経済学科を卒業し、大学在学中には宣伝会議のコピーライター・コースと東京アナウンス・アカデミーのDJ科という二つの専門学校に通いました。現在のようにちゃんとした音楽業界のための専門学校などなかったので、なんとかして音楽業界にもぐりこもうと思って、バイトしたお金で通ったのがこの二つの学校だったのです。

(2)東京に住んでいないと、難しいか?
 これは、ケース・バイ・ケースですね。地方の雑誌やフリー・ペーパーを作る仕事だったら、地方に住んでいても仕事をすることはできます。ただ全国展開している音楽雑誌に原稿を書きたいと思ったら、やはり東京(か近郊)に住んでいるほうが絶対的に有利です。というのは、そういう雑誌の編集部のほとんどが東京にあるということと、アーティストの所属事務所が東京に集中しているので、インタビュー場所が東京になることが圧倒的に多いからです。ごくごく稀に地方に住んでいて、ライヴ・レポートとか地方でのインタビューをしているライターもいますが、たいていは一度東京で仕事をして実績を積んでいる等の、経験がある人たちです。「これからライターになりたい」と思う人は、やはり東京を目指すのがいちばんいいと思います。

(3)年齢制限は、あるのか?

 「一度、就職したけれど、夢をあきらめられない」「結婚して家庭の主婦だけれど、どうしても音楽ライターになりたい」という声も、よく聞きます。そういう人たちがいちばん気にしているのが年齢のことですが、基本的にライターには「年齢制限はありません」。前回も説明したように、ほとんどのライターはフリーランスなので、会社に就職するわけではないからです。終身雇用の会社とは違って、ライターは実力の世界ですから、年齢で原稿料が変わるということはありません。でも、年齢や経験を重ねて、いいインタビューや原稿が書けるのであれば、年をとっていることもプラスに作用するはずです。ただ年齢差があることで、若いアーティストや編集者とうまくコミュニケイトがとれない場合などは、それがマイナスに働いてしまうケースもありますね。また、若い子だったら雑用を頼めるけど、大人の人には頼みずらい……とか、普通の職場と同じような小さな問題はあると思いますが、基本的にはあまり関係ないと思います。


ちなみに、わたしは大学在学中からラジオの仕事を始め、その後、テレビのレポーターを3年やってからライターに転身したので、この仕事を始めたのは20代の後半とかなり遅いです。でも、実際にもっと遅い人もいますし、音楽の世界ではないですが、40代になってからライターを始めた人もいます。それ相応の努力と実力があれば、年齢には関係なくできる仕事だと思いますよ!

 
大島暁美のロックンロール日記