hideがロックに興味を持ち始めたのは、中学2年の時。友達に聞かせてもらったKISSのアルバムに衝撃を受けて、一気にロックンロール・ワールドへとのめりこんでいく(実は、YOSHIKIも最初に好きになったバンドのひとつに、KISSを挙げている)。すぐに彼はKISSの載っている雑誌を買いあさり、ファンクラブにも入会する。そして、入会金を払った翌日から、郵便受けの隣に立って、会報が送られてくるのを待っていたという。夕方になると潮風が吹いてくる横須賀の自宅の前で、日が暮れるまで郵便屋さんが来るのを待って、立ち続けていた中学2年生のhide。彼が常にファンの気持ちを考え、ファンの立場に立って行動していたのは、自らのこんな体験があったからだ。KISSのファンクラブが解散した時、マジに泣いたというhideだからこそ、「俺は、世の中でいちばんファンの気持ちがわかるミュージシャンかもしれないよ。だって、もともとは自分がいちばんのファンだったんだから」という言葉にもうなずける。 |
次第にKISS以外のバンドにも興味を持ち、毎日ロック中心の日々を送っていたhideが、聴くだけではなく自分もプレイしたいと思うまでには、それほどの時間は必要なかった。中学3年になるとテニス部に入部したのだが、自分の部屋ではテニスのラケットをギターに見たてて、鏡の前で弾くポーズをとってばかりいたという。そんな彼の熱意を知って、hideのよき理解者で、横須賀の駅前で美容室を経営していたおばあちゃんが、ギターを買ってくれた。それも、世界的な名器といわれるギブソンのレスポールギター。値段は相当高く、簡単に中学生が持てるような代物ではない。hideの周りにはロック好きな少年たちがたくさんいたが、本物のギブソンのギターを持っている中学生は、彼以外にはいなかった。一躍、彼は横須賀だけでなく、隣町にまで噂が伝わるほどの有名人となった。放課後になると、友達がギターを見るためにhideのうちに遊びにやってきて、その中にはhideの知らない子まで混じっていた。 |
当時のニックネームは「ギブソン」だったというくらいだから、そのギターの威力は相当のものだったに違いない。にも関わらず、hide自身はギターの弾き方がわからなくて、歌謡曲をローコードでジャカジャカ弾くのが精一杯だった。雑誌のオマケについている譜面を見ながら、KISSの曲をフォークみたいに弾いては、「俺にも、弾けた!」と思って満足していた。中学3年でギターを手に入れて、自己流ながらも弾き始めたhideの夢は、「高校に入って、バンドを組むこと」だった。 |
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だが、不幸にも彼が進学した高校は、生徒手帳に「エレキ禁止」と書いてあるほど厳格な学校だった。「バンドをやるために、高校に行くくらいの意気込みだった」という彼が、なぜそんな厳しい学校を選んだのかというと、推薦で行ける学校だったからである。小さい頃からの「受験はしない」というポリシーを、この時も貫いていたのだ。なにしろ、彼は試験の日までこの学校が男子校なのも知らなかったというくらいなのだから、エレキ禁止を知らなかったのも無理はない。 |