ロックンロール日記
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音楽業界への道

 ◆第十回 いい文章を書くためには
 前々回の「ライターになるために必要なこと」の中で、ライターとして仕事をしていくためにはとにかく文章力とインタビュー力が大切だということを書きました。そこで、今回と次回の二回にわたり、「いい文章を書くためには」「いいインタビューをするためには」どうしたらいいのかを、具体的に考えてみたいと思います。今回は、まず文章についてです。

 わたしは、いつでもどこでも誰と話をしても、「ライターにいちばん大切なのは文章力」と力説しています。ライターというのは読んで字のごとく、基本的にはただの「もの書き」なので、文章がきちんと書けなければ始まらないと思っているからです。とかく音楽ライターという専門的な分野での仕事をやりたいと思っている人の場合、「音楽の知識は」とか「ミュージシャンと仲良くするには」とか、付随点を気にしている人が多いんですよね。もちろん、そういうことも大切ですけれど、正直いってそれは二の次。まず根本的なことをきちんと把握して、プロのもの書きになれるように頑張っていきましょう。

 一般の雑誌や新聞等に掲載される記事を書くためには、別に専門的な技術は必要ありません。多分、小学校で習う程度の国語の基礎知識があれば、たいていの記事は書くことができるはずです。でも、実はそこが落とし穴なんですよね。ちゃんと学校で習ったはずの文章の基礎が、身についていない人がすごく多いのです。「てにをはの使い方」とか「主語と述語の関係」とか「起床転結の作り方」とか。あまりにも基本的なことなので、自分が「できてない」ことを自覚している人のほうが少ないくらいですが、実際にはライターを目している人の中にも国語力が低い人はかなりいるように思います。でも、もう一度小学校からやり直すことはできませんから、自分でシビアにチェックして弱点を知るようにしましょう。「文章の書き方」系のテキスト本は何冊も市販されているので、一冊買って一度読んでみることをおすすめします。昔、習ったことを忘れていたりして、意外に新しい発見があると思いますよ。
 ライターが書く文章は人に読んでもらうための文章なので、日記のように自分だけが理解できればいいというものではありません。きちんと読者に意図することを伝えるためには、自己中心的な文章にならないことが大切です。本人だけがわかっていたとしても、読者がちんぷんかんぷんな文章では、公共の媒体である雑誌や新聞に載るはずがありませんからね。そのための第一段階として(1)の文章の基礎力が必要となってくるわけですが、さらに常に読者の視点を頭の片隅において書く習慣をつけましょう。いちばんいいのは第三者に原稿を読んでもらって率直な感想を聞くことですが、それができない場合には自分の書いた文章を何回も客観的に読んでみることです。ライターが書く文章は、決して散文でもポエムでもありません。アーティスティックな芸術作品であることよりも、読者にわかりやすくて伝わりやすい文章であることを心がけましょう。
 書いている自分はたくさんの情報を持っていたとしても、基本的に読者は何も知らないことが多いということを覚えておきましょう。バンドやアーティストの経歴やポジションは、誰でも知っているわけではないからです。たとえば、ギタリストAさんの記事を書くとき、Aさんが××バンドのギタリストであるという大前提をいちばん最初に書いておかないと、読者は混乱してしまいます。それは、A(ギタリスト)とさりげなく表記するのでもいいし、文章やインタビューの中に自然に盛り込む方法でもかまいません。インタビューする側はもうAさんのことを熟知しているので、ついつい基本的な情報を文章に盛り込むことを忘れがちですが、読者の中には初めてその人の記事を読む人もいるということを常に頭においておきましょう。某雑誌にあるヴォーカリストのギターを抱えた写真とインタビューが載ったとき、どこにも彼の担当楽器に関する記述がなかったので、読者の多くは彼をギタリストだと勘違いしてしまったという笑えないエピソードも実際にあったりするんですよ。

 ライターが書く文章は、400字程度の短いものから、20000字を超えるロング・インタビューまで、長さはさまざまです。どんな長さの文章にも対応しなければいけないのがプロのライターですが、短文か長文かでポイントの置き方が変わってくるのは当然のことです。短い場合はいかに端的に少ない文字数の中で伝えたいたいことを表現するか、長い場合はアーティストの息づかいや人間性をいかに行間ににじませるかが、ポイントです。ただ、どちらにせよ、まず書き始めるときに「要点=いいたいことは何か?」ということを、自分の中でしっかりと決めてから書き始めることが大切だと思います。短い文章では要点は一つに絞られるでしょうし、長い場合はいくつかの要点に沿って文章の波ができるでしょう。文章の長さに応じて要点とその数を決めてから、原稿を書き始める癖をつけると、散漫な文章になるのを防ぐことができると思います。
 これはすべての原稿にあてはまるわけではないですが、リズム感のある文章はたいてい読みやすいものです。文法的には間違っていないなのに、なぜか読みにくい文章ってありますよね。それは、リズムが悪いからなのです。日本語には「575」とか「××調」とか、昔から読みやすいリズムがあります。別に俳句じゃないのだから、すべての文章を575にする必要はありませんが(というか、そんなこと考えていたら、原稿は書けません)、なんとなく文章のリズムを気にする癖をつけておくと、自然と読みやすい文章を書けるようになります。そのためには、書き上げた原稿を何回も読み直してみることが必要です。たとえば、同じ意味でも「でも」と「しかし」と「だけど」と「けれど」では、読んだときのリズムが違ってきますよね。読み直してみてなんとなくリズム感が悪いなと思ったときは、こういう同じ意味の違う言葉に置き換えていちばん読み心地のいい単語を捜し出しましょう。こういう習慣をつけておくと、スピード感のある読みやすい文章を書くことができるようになると思います。
 
大島暁美のロックンロール日記