ロックンロール日記
hideのいた風景

 今年はhideの七回忌なので、いろんなイベントが目白押しだ。彼を知ってる誰もがいうと思うけれど、本当に月日の流れは速いものだ。あの5月2日からの一週間がつい最近のことのようにも、ものすごく昔のことのようにも感じられる。でも、hideが旅立ってしまったという実感は、あの頃よりも今のほうが強い。正直いって、他界直後はまったく実感がわかなかった。なんか大変なことになってしまって、毎日がぐるぐると過ぎていくけれど、「hideが死んだ」という事実は実感できなかった。というより、無意識のうちに現実から目をそむけていたのかもしれない。ようやくその事実を実感できるようになったのは、3ヶ月とか半年くらいたってからだったように思う。今年のお正月にPATAとゆっくり飲んだとき、「もし、松本が生きていたら、今年は39歳だよね。あいつのことだから、『あと1年で、40歳だ!!』って大騒ぎしてうるさかっただろうな〜」と、しみじみいっていた。PATAにいわれて、本当にhideちゃんがジタバタ騒いでいる姿がありありと目の前に浮かんできた。そして、なんだかものすごく悲しくなった。わたしたちはどんどん年を重ねていくのに、彼は永遠に33歳の「若者」のままなんだね。でも、hideちゃんのことだから、きっ40歳になっても50歳になっても、「若者」のままでいたような気がするけどね……。
 今年はhide七回忌Memorial Projectとして、いろんなイベントが企画されている。4月28日には、ハイパー・ベスト・アルバム「KING OF PSYBORG ROCK STAR」もリリースされた。INAちゃんへのインタビューをしたり、このアルバムについての原稿をいくつか書いていく中、わたしは「hideは人間と機械が合体したサイボーグという存在に憧れていたのではないか」という仮説をたて、彼の音楽やビジュアル・アプローチからその検証をして文章に綴っていた。で、あることを思い出したのだ! この話は、今まで記憶の彼方に埋もれていたので、どこにも書いていない。ちょっとセンセーショナルな話かもしれないけど……(笑)。
 いつものように4〜5人で意味もなく飲んだくれていたある晩のこと。突然、hideが「俺、宇宙人とSEXしたことがあるんだ!」と爆弾発言をしたのだ。どういう流れで、その話が出てきたのか、全然覚えてはいない。昔のロックンロール日記やゆばまんがしらにしつこく書いているように、当時はしょっちゅう一緒に飲んでいたのだけれど、だいたい同じメンバーで固まっていて、関係者以外の女っ気はまったくなかった。当時のミュージシャンはツアーで地方に行くと結構羽目をはずして遊んでいた人もいたけれど、Xのメンバーは見事なくらいひたすらお酒を飲んでいて、とにかく浮いた話はほとんどなかったんだよね。そんなhideちゃんだったから、「宇宙人とセックスした」発言にみんなちょっと驚いたけれど、当時の彼のモットーが「つまらない真実よりも、ウケる嘘」だったから、誰も全然信じなかった。ちょうどその頃、「いろんなネタをデフォルメして面白い話を作り上げる」という変な遊びが流行っていたので、「またhideがウケ狙いで変なこといってるよ」くらいにしか思わなかったのだ。でも、その日は一晩中、その話題で持ちきりだったな。みんなが「オカマだったんじゃないの?」とか「普通の女を勘違いしただけなんじゃないの?」といっても、hideちゃんは必死になって「本当なんだってば!」って力説してた。「なぜ、その女を宇宙人と思ったか」なんてことも事細かに説明してたけど、hideちゃんが下ネタ系の話をしたのってこのときだけだったように思う。
MEMORIES
 PSYBORG ROCKの原稿を書きながらそのことを思い出していたら、必死になって宇宙人の説明をするhideちゃんの姿がありありとよみがえってきた。あれだけ一生懸命に話してたんだから、もうちょっと真面目に聞いてあげればよかったな。今、思えば、単なる妄想とかでっち上げじゃなくて、彼流の何かのアピールだったのかもしれないなって気がする。もちろん、サイボーグと宇宙人は違うけど、そういう近未来的な未知なるものに憧れる気持ちを彼はその頃から持ってたってことかもしれない。
それにしても、「宇宙人とセックスした」なんて、いかにもhideちゃんらしい発想だよね。なんか思い出したとき、しばらくの間、一人でニヤニヤ笑っちゃったよ。
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MEMORIES
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